狭きペンタブ業界

お絵かき

この内容、昨年書いたものとほとんど同様なのですが、消えてしまったので再投稿。
中国の規制が強化されたのか、今はアクセスできないところの情報もあるので覚え書きとして残しておきます。(大したことは何も書いていないんですが)

時代はデジタルで、絵を描くと言えばデジタル絵の占める割合が高くなったように感じます。
そこで欠かせないとも言える存在が「ペンタブ」や「液タブ」でしょう。
マウスで描くのは…中々難易度が高いものがあります。(私はどちらにせよ下手ですが)
そんなペンタブ、最近ではCOVID-19の感染拡大でテレワークが広まった影響も大きく、仕事への活用が普及してきているようですね。
絵師だけが使う品物、というイメージは頭が古いという時代になって、ごく一般的に遍く使われるようになったという所でしょうか。
その状況は、何も日本に限ったことではなく世界中で使われているわけですが、その供給元を見ると随分偏っています。
まぁ、そんな分野は他にもごまんとありますが、なんとなくペンタブ業界について軽く書き記しておきたいと思います。

日本か中国か台湾か

実質選択肢は日本メーカーと中国メーカーの、ほぼ二択と言って良いと思います。
台湾メーカーは中国メーカーへの特許技術供給がメインのようですから、実質的には選択肢に入れるべきかは微妙…と言ったところです。
以下にメーカーをまとめていきます。

ワコム(https://www.wacom.com/

言わずと知れたワコム、シェアは長年トップの座を譲らない王者。
唯一の国内メーカーであり、ペンタブの先駆者的存在ですね。
そして現在のワコム製品の特徴は…値段が高い(´・ω・`)
中国メーカーが出張ってきている現在ではやはり価格を比較してしまいがちなわけですが、平均的にも1.5~2倍くらいの差があります。
2010年代前半頃までは性能差で十分にそれも頷けたのでしょうけど、最近はその点も顕著な差が無くなってきています。
今はまだ圧倒的とも言えるシェアがありますが、数年後これがどうなっているか…
なお、液タブの入力技術には電磁誘導方式をメインで使用し、特許を取得しています。
この特許はワコムの強みの一つでしょうね。
中国系(台湾系)はこれに対して電磁共鳴方式を使用しています。
ワコムは2022年に入ってからも数十の特許を出願・登録しており、技術開発とともにしっかりと自社の強みを守ろうとしていることが窺えますね。
これから中国との競争でどうなっていくか…。

XP-PEN(https://www.xp-pen.jp/

業界の2番手を走るメーカーです。
何故か一部ではアメリカ企業というふうに言われています。
しかし、ほとんど中国企業です。
Amazon.co.jp出品者プロフィールやホームページ等で「日本で設立された」ことやアメリカに籍を置いていることを殊にアピールしているのが、なんとも違和感を覚えさせます。
「日本で設立された」とは言っても、つくったのは実質台湾企業(Yutron)ですし、Yutron子会社のピー・アクティブの業績不振やらその後の経営会社(シーグランド)の倒産やらもあって、本当にその「日本で設立」は強く謳うようなポイントなのか、疑問を抱かざるを得ません。
それは置いておいて、Amazon出品者ページでは一切記述されていませんが、中身は完全に中国企業なんですよね。
あのページを見ると、それを隠したいとしか思えません。
ホームページにはHanvon Ugeeグループの持株会社になりサポートを受けているという記述はありますが…サポートというよりかは全面的に傘下になっているだけでしょう。
日本向けページの文章には簡体字が散見されますし、ページのソースコード中のコメントも中国語で記述されていますから、その制作管理もアメリカ法人のそちらは一切関与することもないのでしょう。
XP-PENの液タブ入力技術は、恐らく電磁共鳴方式です。
親会社Hanvon Ugeeがそうですから、子会社であるXP-PENも同様と考えるのが自然です。
また、特筆すべきこととして、Amazonや楽天以外でもしっかりと販売展開していること。
これは他の中国系メーカーではありません。
ヨドバシ等でも買えます。

UGEE(深圳汉王友基科技有限公司)(https://www.hanvonugee.com/

XP-PENの親会社的存在です。
Hanvon PentechがUGEE(友基)を買収して出来た会社です。
Hanvon Pentech(北京汉王鹏泰科技股份有限公司)は北京の大企業で、資本金は約3800万元、日本円にして5億円以上です。(2022年時点)
日本で今出回っている製品だと、板タブが多い印象…
Amazonでの販売者は香港法人で、やはりこちらも中国企業の印象を回避しているような感じがしてなりません。
また、刻印するブランド名だけを変えた同製品をXP-PENとUGEEの名で販売しています。
中国国内ではUGEEメイン、国外ではXP-PENメインと言ったところでしょうか。
やはり「日本で設立された・アメリカに籍を置く企業」というのは強みなんですかね。
入力技術は電磁共鳴方式です。

HUION(深圳市绘王动漫科技有限公司)(https://www.huion.com/jp/)(https://www.huion.cn/

最近AmazonではワコムとXP-PENに次いで製品投入をしてきているメーカーです。
会社組織としては資本金3000万元を超える大企業です。(2022年時点)
国も絡んだ事業展開で、この業界単体で見るならば、上述のHanvon Ugee以上の規模と言ったところ。
子会社も多数持っており、業界の重鎮です。
使用しているのはやはり電磁共鳴方式です。(というかワコム以外は全てそうですね)
中国国外での最大の販売市場はAmazonだと思いますが、複数の販売者が混在しています。
中でも日本AmazonやアメリカAmazonで最も多数取り扱いをしている販売者が「shenzhenshigebeierkejiyouxiangongsi」です。
漢字にすると「深圳市geibeier科技有限公司」…gebeierの部分は3文字というのは分かりますが、漢字は分かりませんね(´・ω・`)
というわけで住所「xinghualubei102hao chuangzaolikejidasha Bdong712 fuyongjiedaoxingweishequ shenzhenshibaoanqu 518000 CN」から特定しましょう。
ピンインで書かずに漢字で表記してほしいものですが…とりあえず漢字に直すと「深圳市宝安区福永街道兴围社区兴华路北102号创造力科技大厦B栋712」
ビルの一室のようですが…登記情報が見当たりませんでした。残念。
実態があるのか、正直謎ですね。

HUIONのWikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/HUION
出典が全く書かれていないようなものですが、中々に気になる情報があります。
「2000年に外貿事業部を設立。社名の通り、中国国外から動漫(アニメと漫画)用ペンタブレットやプリンターの輸入を行い、Hanvon(漢王科技)といった他社製品のOEMやODMなどを行っていた。」
私の調べ得た範囲では、HUIONの設立は2011年で、それ以前の情報が見当たりませんでした。
前身の会社…気になります。
などと2022年に調べたときは思っていたのですが、同年4月末頃に、Wikipedia記事が編集されて該当部分が削除されていますね。
削除した記事編集者が、その他に何もしていない捨てアカウントなあたり、削除の根拠も信頼性もゼロなんですが…。

GAOMON(广州高漫电子科技有限公司)(https://www.gaomon.cn/

AmazonではHUION並みに多数商品が並んでいます。
このGAOMON、HUIONの100%子会社です。
資本金は約1000万元で、中々の規模の会社です。(2022年時点)
製品のイメージとしては、HUIONよりも若干安価なモデルを扱っている印象があります。
Amazonでの販売者は「GRAPHICS TABLET TECHNOLOGY (HK) LIMITED
香港企業のようですが、何故か住所表記でHK(香港のこと)とCN(中国のこと)が二つ書かれており、郵便番号も000000という記載がされています。
電話番号も+852でなく+86で始まるものが表記されている辺り、中身は中国と見て良さそうですね。
この会社、漢字に直すと「繪圖板科技(香港)有限公司」となり、見た目は香港企業ですが、ペーパーカンパニーか何かなんですかね…

VEIKK(北京漫友科技发展有限公司)(https://www.veikk.cn/

資本金100万元の、今まで見てきた中では小規模な会社です。(2022年時点)
扱っている製品は安価な初心者向けが多いように思います。
また、新製品があまり投入されていない辺り、企業体力は少し厳しそうな印象です。
Amazonでの販売者は「shenzhen pinbei keji youxian gongsi
漢字に直すと「深圳品贝科技有限公司」で、「北京绘客电子商务有限公司」の100%子会社のようです。
绘客はVEIKKのEコマース専業会社で、漫友科技の関連会社です。

Artisul(https://www.artisul.com/

上述中華メーカーの元締め的存在であるUC-Logicの商標ブランドです。
2019年までは日本のアシター商事が国内の正規代理店を務めていたようですが、同年にArtisulが買収されたそうな…(http://artisul.jp/
情報公開がなされていないため憶測ではありますが、買収したのは恐らく中国メーカーでしょう。
現在のブランドページのソースコードを見ると、コメントが簡体字で書かれています。
台湾UC-Logicのホームページのソースコード中コメントは繁体字で書かれているので、同社が請け負っているとは思えません。
また、恐らくの買収先はHUIONと思われます。
現在AmazonでArtisulブランド製品を販売しているのは「shenzhenshizongzhikejiyouxiangongsi」
これは漢字に直すと「深圳市宗智科技有限公司」となります。
そしてその宗智科技は「深圳市安度科技有限公司」の100%子会社です。
そして更に安度科技はHUION(绘王动漫科技)の100%子会社です…。
という感じで連関性が見られたので、現在はHUIONがArtisul製品の販売を担っているのかなという予想が出来ます。

UC-Logic technology co.(友碁科技股份有限公司)(https://www.uc-logic.com.tw/

Artisulの商標権を持っている、また、中華メーカーが足並みを揃えて使用する電磁共鳴方式の特許元の会社です。
資本金は約3億台湾ドル、日本円にすると12億円以上にもなる大企業です。(2022年時点)
Artisul Taiwanの親会社ですが、台湾国外事業を担うArtisul Globalの親会社ではないようです。
私がこれを書いている時点でのArtisulブランド最新製品はSP1603(https://www.artisul.com/PenDisplay/SP1603.html)というものですが、台湾のホームページにそれが掲載されたのは、日本Amazonでの販売開始から数か月後でした。
そのようなラグが生じていることから、現在はArtisul Globalの買収(恐らくHUIONによる)でArtisul製品の開発元はUC-Logicから買収先に移管したと考えるのが自然と思います。
とは言っても、随分と根拠に乏しいただの予測ですが…

Parblo(深圳市快艺科技有限公司)(https://parblo.cn/

資本金約200万元の小規模な会社です。(2022年時点)
日本で出回っている製品も少数で、かなりマイナーな印象…そのくせホームページのブログが割と充実しているという。
日本での販売…という中国国外での販売は「Shenzhen Fast sales ecommerce Co.,Ltd.」が行っているようです。
漢字に直すと「深圳市快销电子商务有限公司」です。
快艺科技よりも後者のEコマース事業の会社の方が古いようで…そちらが前身なのでしょうかね。

2023年に入り改めて見てみると、新製品の日本Amazonでの販売者が「shenzhenshikuaiyikejiyouxiangongsi」になっていました。
これを漢字に直すと「深圳市快艺科技有限公司」となります…つまりメーカー直販!
どうでも良いですが、ここのWikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/Parblo)は…酷いですね(;´ω`)2023年になっても相変わらずか

その他

BOSTO(深圳市博学通科技有限公司)(http://www.bostotablet.com/

資本金約100万元の小規模な会社…新製品も特に出ておらず、上手くいっているのか微妙な様子です。
ホームページ等見た感じだと、国内事業にシフトした感じでしょうかね。
しかし、未だにサイトのSSL化もしていないとは…。

惠州市天敏科技发展有限公司(http://www.10moons.com/

日本ではお目にかかれません。(たぶん)
中国国内ではそれなりに名のある会社なようですが…日本暮らしの身には縁がないですね(・ω・)
こちらもSSL化していないのか…。

ここまで各社見てきましたが…

ここまで見てきて分かるのは、やはり日本か中国かの実質二択ということです。(Artisulが少々不透明ですが…)
また、それと同時に電磁誘導方式か電磁共鳴方式かの二択でもあります。
正直、技術的にはこれ以上紙に描画する感覚に近づけることは出来ないのではないか、という領域に突入しているので、EMRによる方式の差異はあまりないように思います。
となると、消費者の目に映るのは価格とブランドイメージくらいのもので…この先数年後十数年後にこの業界がどうなっているのか、個人的には興味深く思います。

というわけで

長々書いてきましたが、ある程度個人的に整理出来ました。
貧乏人な私は中華メーカー愛用者です(/・ω・)/最近全然書いてねぇですが。
(私の画力ではどのメーカーの品を選んでも下手なことは変わらないのであった!)
では今日はここまで。

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