デジタルスケールを買おう

情報総合

Amazonでデジタルスケールのレビューを書いたので、それに関する話を書いておきたいと思います。
正直、ややこしすぎますよこれ…。
モノを測ることは、基準をつくるということに直結しますから、複雑であって然るべきなのだとは思いますけどね(;´ω`)

デジタルスケールを買いたかった

もともと、はかりは持っていました。
タニタの”KD-187″という古い機種です。(現行品でもあります)
しかし、これが目量1グラム、秤量1キログラムで少々不便でした。

補:「目量」(めりょう)=測定できるのはいくらごとか、という最小単位のことを言います。
補:「秤量」(ひょうりょう)=測定することができる最大量のことを言います。

というわけで、もう少し目量の小さいはかりと、秤量の大きいはかりが欲しかったわけです。
できれば同じくらいの大きさで欲しいなと、Amazonで検索をかけました。

デジタルスケールを買った

そして購入したのが、”L-3100″です。
日本設計だオリジナルだと書かれていますが、これはどうでもいいです。
中国の輸入製品なのは明らかで、同型製品が大量に他でも売られていますが、価格が他よりも安かったので選びました。

いや、どうでもいいと言えば嘘になりますね。
正直読んでいて(#^ω^)は?とはなります。
加えて、輸入販売元であるキングジムには文房具でお世話になっているので、残念にも思いました。

まぁ、これについてはAmazonのレビューで書いているので、そちらに任せることにします。

デジタルスケールのレビューを書いた

レビューを書くというのは、ちゃんと書こうと思えば、それなりに見識が必要です。
私には正直、あらゆる分野でそれが不足していますので、書く際にはいろいろと調べます。
まぁこれは、趣味の領域です(゚∀゚)オモシロイよね

今回の”L-3100″についてレビューを書くにあたって調べるべきだったのは、おおまかに以下3点。
・”L-3100″それ自体や取扱業者、またその類似品について
・計量法について
・計量に係ること全般

まぁこれは、他のレビューにも置き換えて考えることができます。
・そのもの自体についてや取扱業者、またその類似品について
・その製品に係る法令について
・その製品のジャンルに関する知識全般

これらが必要になります。

とは言っても、こんなことを考えている人は滅多と居ないと思います。
これは私の病的と言われる所以でしょうねぇ(笑)
結局のところ、単純に自分がいろいろと知りたいだけです。
(このようなことを考えていないレビューも、画像など非常に役立つものがあります。底面の製品表示などは私も助かっています)

デジタルスケールが法令の表示基準に不適合だった

“L-3100″ではなく、旧製品の”L-3000″についてですが、過去不適合表示があったんですね。(※1)
旧輸入販売者である株式会社エイチアイエム時代の話です。
キングジムが同社を買収した現在では、これら不適合表示は改善されているので、そのあたりはさすがキングジムといったところでしょうか。

しかし、この表示基準不適合というのは、この製品に限らず非常に多いんですね。
毎年行われている調査の中で、表示基準不適合の割合は過半数を超えない年が見られないというほどです。(※1)(※2)(※3)(※4)
(平成29年以前はそんなことはなかったんですが、中国輸入等が容易になり、無知な輸入販売者が増えたんですねぇ…)
いかに、計量法やその関連法令の認識が薄いかということが分かります。

まぁ、表示基準云々という話をすれば、中華販売者の売っているデジタルスケールは大半が違反品です。
だからと言って、モノが悪いかというと一概にそうも言えません。
単純に法令に従っていないのであって、測れるか否かで言えば測れますからね。
購入者に対する罰則もないので、選択肢の1つに入れるのも手ではあります。

デジタルスケールが『「計量法」違反商品』ではなかった

以下の画像を見てください

Latuna-shopより(※5)

私が購入した”L-3100″の旧製品である”L-3000″の商品ページにある画像です。(※5)
「g(グラム)やml(ミリリットル)以外の表記があるもの」
「2kgなど重いものを載せたときに2-3gの誤差が生じるもの」
「計量範囲が3kg以上あるもの」

これら3つが総じて『「計量法」違反商品』なんですって、へェ…。

よくもまぁ、こんな嘘を堂々と書けたものですよ。
先にも書いた通り、自分のところの製品が不適合表示の指摘を受けた途端、それを修正して喜色満面で他所の製品を「違反商品です!」と。
挙句、それが誤りなんですから、滑稽としか言いようがありません。
現在(2024年2月29日閲覧)でもなお、このECサイトの情報が「株式会社エイチアイエム」表記であったり全商品在庫切れであったりと、機能しているのか否か分かりませんが、これを放置するとは(´・ω・`)アカンやろ(注1)

1つ目は、これは大略間違っていません。
計量法第9条にて「非法定計量単位による目盛又は表記を付したものは、販売し、又は販売の目的で陳列してはならない」(※7)とあり、質量や体積の法定計量単位は”g”や”ml”ですから、確かにその通りです。
(認可を受ければその限りではないので「違反商品です!」と断言するのは疑問符が付きますが)

問題は、後ろの2つです。
完全な誤りで、消費者を騙る文言と言って過言でないと思います。
なんなら、他社製品への冒涜とすらとれます。

まず「2kgなど重いものを載せたときに2-3gの誤差が生じるもの」は、この条件だけでは計量法に抵触するか否か判断できません。
仮にこれが計量法に反するのであれば、タニタやドリテックなどが販売している調理用ばかりは、その大半が計量法違反ということになります。
これらの企業が販売している目量1グラム計は、”2kg”での計量精度を”±3g”としていますからね。

事実として、計量法第53条にて「経済産業省令で定める技術上の基準に適合するようにしなければならない」(※7)とされています。
そして、該当の経済産業省令である計量法施行規則第20条にて「日本産業規格B七六一三(二〇一五)による」(※8)とあり、JIS B7613:2015へと基準が委ねられています。
では、肝心のJIS規格はというと、精度についてデジタル場合は

「ひょう量の25%を超える場合」「±3目量」

までが許容範囲であるとの設定です。(※9)(注2)
つまり、目量次第では誤差4グラムや5グラムでも、計量法には反しないということです。

次に「計量範囲が3kg以上あるもの」についてですが、これも全く違反しません。
これが違反要因になるならば、ドリテックの”KS-13“や”GS-500“はどうなるのでしょうか。
先の令和2年度調査(※3)でも秤量3kg超のはかりとして取り上げられていますが、何らその問題性は指摘されていません。
言い換えれば、計量法に抵触することなどないということです。

以上のように、『「計量法」違反商品です!』と書かれているものも、実際には全然違反商品ではありません。

デジタルスケールを買おう

ここまで書いてきたように、今回購入した”L-3100″は売り文句について言えば酷いものでした。
しかし、モノ自体はそれほど悪いものでもありません。
最近の中国製品は高品質なものも増え、これもその1つです。

届いた個体は、カタログスペック上の計量精度に実際には準拠していませんでした。(精度+器差の値を超えた誤差が出ました)
しかし、そもそも秤量3kgで目量0.1グラムの計量精度を出そうということ自体に無理があります。
それを考慮すれば、充分な精度の結果が求められます。

畢竟、謳い文句に無茶苦茶を書かなければ良い製品でした。
黙って「中国メーカーにOEM供給してもらい、安価を実現しています」「本商品は日本の計量法に準拠した家庭用はかりです」などと当たり障りのない事実を書けばいいのに、一体どうして誇張や詭弁の表記をしてしまうのでしょうかねぇ…。

モノ自体は、それなりに使えるものです。
しかし、商業倫理を考えれば購入は疑問符がつきます。
星2つのレビューが書かれたからと、Amazonで直接テンプレートメッセージが届いたあたりにも、疑義があります。
一体何なんだと…(´・ω・`)

以上を全て分かって購入するならば、それは良い選択肢だと思います。
しかし、騙されて購入する人がいるならば、あるいは他社製品を法令違反と真に受ける人がいるならば、酷い話なのではないでしょうか。

参考文献・資料等

(※1)経済産業省計量行政室 2020 「平成30年度計量法特定計量器の試買調査」【https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/15_30fy_ShibaiHoukoku.pdf】(2024年2月29日閲覧)
(※2)経済産業省計量行政室 2021 「令和元年度計量法特定計量器の試買調査」【https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/15_R1fy_ShibaiHoukoku.pdf】(2024年2月29日閲覧)
(※3)経済産業省計量行政室 2022 「令和2年度計量法特定計量器の試買調査」【https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/15_R2fy_ShibaiHoukoku.pdf】(2024年2月29日閲覧)
(※4)経済産業省計量行政室 2023 「令和3年度計量法特定計量器の試買調査」【https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/15_R3fy_ShibaiHoukoku.pdf】(2024年2月29日閲覧)
(※5)株式会社エイチアイエム(注1) 2021 「ご注意ください」【https://latuna.shop-pro.jp/?pid=161152116】【https://file003.shop-pro.jp/PA01470/426/images/5kitchenscalemax3/kitchenscalemax3_4.jpg】(2024年2月29日閲覧)
(※6)株式会社キングジム 2023 「吸収合併に係る事後開示書類」【https://www.kingjim.co.jp/ir/upload_file/tdnrelease/7962_20221216579865_P01_.pdf】(2024年2月29日閲覧)
(※7)通商産業省(経済産業省) 1992 「計量法」【https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=404AC0000000051】(2024年2月29日閲覧)
(※8)通商産業省(経済産業省) 1993 「計量法施行規則」【https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405M50000400069】(2024年2月29日閲覧)
(※9)経済産業省 2015 「JIS B 7613:2015」【https://kikakurui.com/b7/B7613-2015-01.html】(2024年2月29日閲覧)(注2)

注記

(注1)閲覧時点で消滅会社であるはずだが、サイト内表記は同社名のままであるため、このまま表記する。(特定商取引法に基づく表記では株式会社キングジムとなっている)
(注2)JIS規格の在り方には数多の議論がある。著作権法第32条によって公表される著作物は本来引用は認められているはずが、JISCは引用すら許諾を要するとしている。ここでは、著作権法に則って引用した。なお、示したURLはJIS規格票を簡易閲覧できる個人WEBサイトである。該当サイトは2012年1月の開設以来、10年以上にわたってJIS規格を公開しており、その間著作権を問題として表沙汰となっていないことから、JIS規格の一般閲覧ツールに値するものとして提示した。

コメント

  1. ひよこ より:

    Amazonの日本企業(笑)であり、東京大学卒の開発者(笑)の双眼鏡レビューから来ました。
    レビュー消されてしまった内容も気になるので、ぜひ記事をあげていただきたいです。

    • 湿気 より:

      ひよこさん、コメントありがとうございます。
      ひよこ…日和こ…日和…日々和…日々和工業!? もしかして中の人ですか!?

      消されたレビュー本文、せっかくなのでこっちで上げておきます…。
      最近は本当にこういう販売手法が増えて、邪魔だなぁと思っています。
      信じて買う人が居るのも、気分の良いものではなく…。
      最近ダークパターンなんかが槍玉に上がっていますが、同様にどうにかすべきところだと思います(´・ω・`)

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