Amazonで買ったカバンが詐欺商品だった話

中国

 Amazonで「本革バッグ屋TIDING」という販売者(阿部商事株式会社)からカバンを購入したら、それが詐欺でいろいろと腹立たしいので書き殴ります。
 Amazonにはレビューを削除されるし散々だったのん…。(自分から首を突っ込んだんですががが)

「オリジナルブランド」や「日本製」という嘘(序)

 私は初め、適当なサッチェルバッグを探していてここのカバンに行き着いたんですよね。そのときは、別に日本製のものに絞って探していたわけではありませんでした(価格も高いし)。しかし、安価なものの中に「原産国:日本」というのがあったので、珍しいなと思いながらちょっと見てみました。
(Amazon.co.jp: [TIDING] タイディング 本革 ブリーフケース)
Amazon.co.jp出品者プロフィール:本革バッグ屋TIDING

「原産国:日本」との登録情報  引用元:【https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07XXMXH29】(2023/01/28閲覧)

 するとまぁ、無茶苦茶な日本語や入り混じる簡体字。怪しいなぁと思いながらも、連休中で時間もあったので興味本位で購入しました。(安心安全FBA発送!)
 それから届いて開封してみると、案の定中国製感満載でした。「QC.PASSED」系のシールを見ると、それだけで十中八九MADE IN CHINAですよねぇ…。というわけで、連休の空き時間を使っていろいろと漁ってみたわけです。

届いたやつ

「オリジナルブランド」や「日本製」という嘘(前編)

 第一の疑問として、本当に「オリジナルブランド」なのかということ。この会社、Amazonには「TIDING(タイディング)は阿部商事株式会社が日本に登録したオリジナルブランドです」と、楽天には「自社オリジナルブランド「TIDING(タイディング)」です。他のブランドではございません」と、異様なほどにオリジナルブランドというのを強調しています。不自然なほどに。

【楽天市場】TIDINGの商品ページと販売者ページより

 そのような感じで「日本商標(第5862355号)」というのをアピールしているので、同商標を特許庁のJ-PlatPatで検索けんさくぅ!っと見てみると、異議申立て審判の履歴がありました。形式は全部異議で、異議申立番号は「2016-900302」です。

J-PlatPatより

 異議の内容としては、阿部商事株式会社が他の会社に対して「TIDINGの名前はうちが使っているんだから、そっちは使わないでね」というようなもの。この際、申立事由は重要ではないのでおいておきましょう。(申立て自体棄却されていますし、無理のあるいちゃもんです)
 ここで重要なのは、審判にある「申立人は,中国の登録商標「TIDING」の商標権者である広州錚誠商貿有限責任会社から,2012年(平成24年)10月1日に日本国内における「TIDING」の商品のプロモーション及び販売の授権を受けている」という一文。申立人とはすなわち阿部商事株式会社。そして阿部商事は中国の会社からその商標を授権しているというのです。
 おかしいですね。「TIDING」は「自社オリジナルブランド」だったのではないでしょうか。

「オリジナルブランド」や「日本製」という嘘(後編)

 さて、特許庁のおかげで、まずは「TIDING」がオリジナルブランドということが虚偽であると判りました。次は、大元の商標権者として出てきた「広州錚誠商貿有限責任会社」について調べてみましょう。日本の字体だと調べにくいので、簡体字になおして「广州铮诚商贸有限责任公司」と。
 2009年にできた革製品の製造業、OEMやODMを行っているようです。というわけで、中国の定番卸サイト、アリババの1688を見に行ってみましょう。
 と、1688を見てみると、出るわ出るわ元製品。そして、私の購入したサッチェルバッグも見つかりました。写真を見るに同一製品で、商品ページには编号(型番のこと)が1102だと書かれています。梱包に「1102」と手書きされており、何の数字かなと思っていましたが、なるほど型番のことだったようです。

 ここまで一致すると、もう明らかですね。「原産国:日本」というのも嘘で、中国製だったようです。正確には、1688で「产地:广州」と書かれているので広州製ですかね。

詐欺か否か・違法行為か否か(前編)

 私は初っ端に「詐欺」と書いたのですが、詐欺という言葉は法律的にはいろいろとややこしいんですよね。まぁ、便宜上一般的に使われる人を騙すという意味で考えれば問題は無いのですが。
 ただ、今回の場合法律的にもアウトだと思います。というのも、今回の一件で阿部商事は故意に虚偽説明を行っているのですよね。商品説明で「原産国:日本」と書くくらいなら、ただのミスというのも考えられるでしょうけども、それだけではなかった…。
 私は「原産国:日本」ということについて、阿部商事に直接問い合わせていたのです。結果、「この商品は千葉県の工場に生産になります」との返答がありました。個別の問い合わせによる返答、もはやミスで済ませられる範囲ではないでしょう。
 そして、オリジナルブランド云々に関しては間違いようのないところですから、明らかです。
 それらを加味し、商品販売という金銭の授受が発生することを考えると、詐欺であると言って差し支えないのではないでしょうか。

詐欺か否か・違法行為か否か(後編)

 詐欺かどうかは置いておいても、今回のことは商業的にはいろいろと問題のある行為であるのは間違いないでしょう。
 まず、不当表示について。ここまでで書いたことから分かる通り、この会社が書いていることは不当表示ばかりです。
 そこから考えられるのは、不正競争防止法第2条1項20号への抵触です。「TIDINGは自社オーダーメイド」「他社製品は海外製で断裂、錆びることがある」などというように書き、TIDINGブランドは海外製ではないかのように見せかけ、他社製品よりも優れているかのように書いています。しかし、それは嘘なのですから、不当ですね。
 他にも抵触しそうな法律はありますが、割愛します。とにかく、明らかに法律的にもまずいということだけは言えます。

私が今回買ったもの以外も

 私が今回購入したのはサッチェルバッグ1つですが、言わずもがな、他の商品も同様です。1688で卸されている製品一覧を見れば分かりますが、総じてそこから仕入れられる製品を、Amazonや楽天で日本ブランドと偽って販売しているに過ぎません。
 ここまで「TIDING」ブランドについてしか書いてきませんでしたが、「潮牛」についても同様です。「TIDING」も「潮牛」も、阿部商事が中国広州錚誠商貿から商標を借りて販売しているOEM製品です。決して日本のオリジナルブランドでも日本製でもありません。

温かい目で見守るAmazon(前編)

 今回の一件を踏まえ、私はAmazonで商品レビューを書きました。内容的に販売者に関する情報量が増えそうだったので、規約上それではまずいと商品についての文量を増やし、気を遣って書きました。
 しかし、消されました(^q^)アウアウアー
 その際にAmazonから来たメッセージが以下の通りです。

「湿気様、いつもお世話になっております。
[TIDING] タイディング 本革 ブリーフケース メンズ サッチェルバッグ ビジネスバッグ 16PC B4対応 リュック 大容量 3WAY 通勤 出張 手提げ ダークブラウン
のレビューを行っていただきありがとうございます。
満足できるものではなかったとのことで、たいへん申し訳ありません。
商品の信ぴょう性に関するお客様の懸念事項を調査しましたが、お客様が受け取った商品が本物であることが確認されました。
そのため、送信していただいたレビューは削除されました。
この措置は、今後お客様にとって参考となるよう、カスタマーレビューを可能な限り正確なものに維持するためのものです。
ご意見をお寄せいただき、ありがとうございます。
今後もAmazonでのショッピング体験に関する貴重なフィードバックをお寄せいただければ幸いです。
ありがとうございました。」

 はい、意味が分かりません。「本物であることが確認されました」などと書かれていますが、私はレビューで偽物だの本物だの一切書いていません。
 以下、投稿した(しようとした)レビュー本文を掲載しておきます。(少々長いのですが)

「購入しましたが、商品説明等、虚偽ばかりでした。
製品自体の品質も、価格相応程度で、高品質とは思いません。
少なくとも、星4個や5個を付けられるような品物ではないと断言できます。
カバン前面のバックルベルトは、設計が悪いのか開閉が非常にやりづらい。
ショルダーベルトや肩掛けベルトは、革の厚みが不足しており、耐久性はあまり見込めない。
このレベルなら、もう少し安価な中国製品があります。

というよりかは、そもそも品質以前に、商品に関する情報が嘘で塗り固められていることが問題です。
「原産国:日本」と表記がありますが、完全に中国製でした。
メーカーは中国企業、かつ、生産は中国の広州で行われているようです。
販売者ページでも商品ページでも「日本のブランド」とのアピールが非常に強くなされています。
しかし、これは嘘です。
以下、根拠を書いていきます。

私は初めに、商品ページや販売者ページの日本語の不自然さ、また、商品画像に中国語簡体字が使われていることから、何かがおかしいと調べてみました。
すると、中国の広州錚誠商貿有限責任会社が中国国内で展開する本革製品のブランド、それが「TIDING」と「潮牛」と分かりました。
そして、日本での販売者である阿部商事株式会社は、広州錚誠商貿から特別に権利を受けて同ブランド名を使い、カバンを販売しているということも。
(これらは、特許庁の審判記録である「全部異議2016-900302」に拠ります。)
つまり、商品ページにある
「TIDING(タイディング)は阿部商事株式会社が日本に登録したオリジナルブランドです」
という記述は、明確な虚偽表記であるということになります。
このブランドのオリジナル(起源)は中国です。
そもそも、審判書類に「申立人」(阿部商事)は「親会社」として「中国商標権者」(広州錚誠商貿)を持つ旨の記述が明示されています。
それを考慮すると、阿部商事が「日本企業」であるかどうかすら怪しいものです。
なお、この根拠である異議申立て審判については特許庁のj-platplatで閲覧できるので、自分の目で確かめたい方はそちらをご覧ください。

この時点で、「原産国:日本」のカバンであるということは、十中八九嘘であると予想されます。
それを確証に変えるために、広州錚誠商貿について調べました。
すると、中国の卸サイトで同じ商品が見つかりました。
阿里巴巴の1688にある広州錚誠商貿の商品ページに「编号:1102」とあり、型番が1102であることが分かります。
そして、Amazonで阿部商事から購入したものの外装には、手書きで「1102」と書かれていました。
開封した時点では何の数字かと思っていましたが、なるほど全て合点がいきました。
楽天で販売されている同商品の販売ページには、これまた1102と記述があるので、全て繋がっていることは明らかです。

ここまで順々に書いてきましたが、結論、この商品は中国メーカーの中国製品です。
もしも仮にそうでないとするならば、中国製品の模造品を自社オーダーメイドなどと偽っていることになります。
あちらの方が、同ブランドで古くから同じ製品を製造販売している記録がありましたから。

最後に
ここまで長々書きましたが、品物自体が粗悪品とは言いません。
高品質だ、とは到底言えませんが、そこまで酷いとも思いません。
実際、製造元の会社はメルセデスベンツやベントレーとも共同で製品を出しているという実績もあります。
問題なのは、日本の実質的な代理店であろう会社が、その商品を「日本製である」と偽って販売していることです。
どれだけ良い商品でも、そのような詐欺的な売り方をされると、良い気分ではありません。
そのような会社の利益になるということを理解したうえで、それでもこの商品が欲しいという方にだけ、購入をおすすめします。
そうでなければ…おすすめできません。
同じ中国製でも、それを隠さず売っているものを選びたいところですね。」

温かい目で見守るAmazon(後編)

 長文ですが、どこにも偽物が届いたなどとは書いていませんね。と、Amazonにも不満が募ったので、以下の問い合わせをしました。(序文省略します)

「(略)
メッセージについて、全くこちらのレビュー内容と対応しておりません。
「商品の信ぴょう性に関するお客様の懸念事項を調査しましたが、お客様が受け取った商品が本物であることが確認されました。」
とありますが、私はレビュー本文にて「本物」か否かを一切論じておりません。
また、対義となる「偽物」という言葉も未使用です。
そもそも、私はこの商品が本物でないとは考えておりません。

私は、レビュー本文に「確証ある事実」以外を記述しておりません。
それらの根拠についても、書き洩らすことなく全て書いてあります。

一体、そちらが行った「懸念事項を調査」とは何ですか。
こちらは全て根拠を挙げています。
それらの反証があるならば、示すべきです。

私のレビュー本文内容を否定して削除するならば、その反証を明示してください。
はっきり申し上げると、それもなく同商品の販売を継続させることは、不正競争防止法第2条1項20号への違反を容認することと同義です。
Amazon.co.jpは、法令を軽視するのですか。

こちらの書いたことが誤っているならば、その根拠をお示しください。
少なくとも、そちらが記述する「本物」云々をこちらが論じていないことは事実です。
どうぞ、日本語を理解できる方からのご返答をお待ちしております。」

 このように問い合わせたのですが、はっきり言って根拠云々は一切期待していませんでした。NOT情報開示は、Amazonの常套手段ですから。
 そして返ってきたメッセージには、やはり予想通りそれらに対する回答はゼロでした。
 ただ、「お客様の注文に関するご懸念をもとに状況を調査した結果、出品者の当該商品のお取り扱いを停止いたしました」という予想外の一文が。
 まぁ、面倒な客が来たから適当にあしらっておけというだけのことのようですが…。実際には、これを書いている現在も売られていますからね。

おわりに

 この件から約3週間が経った今も、元気に販売が継続されております。
 現代社会では、嘘で騙しての商売が罷り通るようです。
 恐ろしい世の中ですね!()

 というわけで、Amazonで買ったカバンが詐欺商品だった話でした。
 消されたレビューにも書いていましたが、こういう会社から購入することはおすすめできません。
 ではでは、今回はここまで。

コメント

  1. あら より:

    自分も別の商品ですが
    全く同じ内容の
    「商品の信ぴょう性に関するお客様の懸念事項を調査しましたが、お客様が受け取った商品が本物であることが確認されました。
    そのため、送信していただいたレビューは削除されました。」
    と、メールが来てレビュー削除されました。
    そして、自分も偽物だとか、信ぴょう性だのをレビュー内容に書いてませんでした。

    レビュー内容を全く変えて数度のレビュー投稿をしましたが
    すべて
    「商品の信ぴょう性に関するお客様の懸念事項を調査しましたが、お客様が受け取った商品が本物であることが確認されました。
    そのため、送信していただいたレビューは削除されました。」
    と、削除されました。

    実はある事をするとレビューを削除されない方法がわかりました。
    星5をつけるだけです。
    頭に来たので「この商品は偽物です。」とレビューしましたが未だに削除されてません。

    • 湿気 より:

      あらさん、はじめまして。
      大分放置しててめちゃめちゃご返信が遅れてしまいましたが、コメントありがとうございます(;´Д`)

      星5ならば削除されないとは、なるほど(笑)
      しかし、星の数だけ見て内容は読まないユーザーも多いでしょうから、内容の如何にかかわらず、星5を付けると売り上げは伸びそうな感があります。
      星5で悪評をきちんと書くのか、あるいは書かない方がましなのか、どちらが良いんでしょうかねぇ…。

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