ややこしい!トンボレスキュー®とトンボレックス® ―なぜ日本にはトンボブランドが多いのか―

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私は日常、外出時は手袋を付けています。
目的は日焼け止め・防護・防寒・ファッション・グリップ感と、季節やその時々によって変わりますが、ほぼ年中使っています。
中でもよく使うブランドが「トンボレスキュー®」と「トンボレックス®」なのですが…なんだか似ている(´・ω・`)ニテル
正直何年も使っておきながら、去年のある時点まで、混同していましたorz
というわけで、ここに覚書をまとめておきます。

別会社の別ブランド

まず、「トンボレスキュー」と「トンボレックス」の2商標、異なる会社のモノです。
前者は「ユアサグローブ(株)」の、後者は「(株)トンボ」の登録商標。

はてさて、ややこしいですね…。
このややこしさはメーカーも認識されているようで、ユアサさんが「商標出所混合防止関連案内」をホームページに掲載しています。
それによると、

下記2社は、現在、資本・商品関係で全く関係がありません。2社が販売する商品は、全く別物です。

ということです。(※1)
どうしてこのようなややこしい事態になったのでしょうかねぇ(´・ω・`)

なぜトンボなのか(他企業編)

そもそも、どうしてトンボなのでしょうか。
日本には、トンボのブランドロゴやそれにまつわる会社名が多数見られます。
トンボ鉛筆しかりトンボ学生服しかりトンボ工業しかり、その他にもラムネやハーモニカなど、いろいろなところでトンボのマークが飛び交っているわけです。
しかしなんと、これらはどれをとっても資本的なつながりがないというのが実情。
同じ昆虫でも、これほど重複して使われるのは他にないのではないでしょうか。

こうして多用されるのは、いくつか理由があります。
例えば、トンボ鉛筆のWebページから引用すると、

トンボは勝ち虫とも言われ、昔から縁起のいい虫であり、また日本の呼称を秋津島ともいい、秋津はトンボのことを言います

とのこと。(※2)
また、トンボブランドを使用するニチアスも同様に、

奈良時代、トンボは「秋津(あきず)」と呼ばれました。当時日本の中心であった大和国のほか、日本全体を「秋津島」と表現することもありました。またトンボは、非常に縁起のいいものと捉えられていました。

と記しています。(※3)

これらの根拠を遡及すると、古事記や日本書紀にまで遡ることができます。
例えば、本州のことを古事記では「大倭豊秋津島」と、日本書紀では「大日本豊秋津洲」と書いてあります。(※4)(※5)
日本=秋津島(洲)だったわけですね。

また、その呼称となった理由として、神武天皇が大和(日本)の国見で「蜻蛉のとなめのごとし」(猶如蜻蛉之臀呫焉)と発言したことが挙げられます。(※5)
つまり、「蜻蛉」=「あきつ」→「秋津」=「日本」という流れですね。

この時代には、「蜻蛉」=「あきづ」→「秋津」=「日本」の図式が定着していたようで、万葉集の巻第一にも

「大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は」

という雑歌が登場します。(※6)
トンボは古くから日本を体現する存在だったというのが、よく分かります。

次に、縁起の良い勝ち虫というところですが、これも古事記や日本書紀に根拠が見られます。
例えば古事記の方では、雄略天皇の条に、彼のことを刺した蚊を、トンボが喰ってしまったという記述があります。
そして、それを見た彼は、トンボを勇猛と称える歌を詠んだという話です。
なお、同様の記述は日本書紀にも見られます。
そして、これに拠ってトンボを勝ち虫(勝軍虫)と称し、様々な武具に刻印したり家紋に選んだりしたということです。(※7)

その他にも、トンボは前にしか飛ばないという性質があり、それを勇敢な姿と見るような話はよく耳にしますね。
このようなところが、縁起の良さに繋がったのでしょう。

以上のような理由から、日本ではトンボを象徴としたブランドが数多く存在するものと考えられます。

なぜトンボなのか(トンボレスキュー®)

では、肝心の手袋ではどうでしょうか。
例えばユアサグローブのトンボレスキュー、この由来は上で挙がったものとは異なるようです。
ホームページのブランド紹介によると

郷土のシンボルである「赤とんぼ」に由来する

とのこと。(※8)

赤とんぼというと、シューマンの序奏と協奏的アレグロ…もとい、かの有名な童謡ですね。
作詞者の三木露風さんが生誕して幼少を過ごしたのが、兵庫県たつの市であったということから、同市は「童謡の里宣言」を出しています。(※9)
そこから、赤とんぼがたつの市の郷土シンボルということになっているわけですね。

そして、ユアサグローブの所在地は兵庫県たつの市。
トンボレスキューというブランド名も、実にぴったりですね。

なぜトンボなのか(トンボレックス®)

こちらは簡単ですね。
会社名自体が「株式会社トンボ」ですから、そこからの命名であると考えられます。
では、会社名の由来はどのようなものなのでしょうか。

特に公開情報にはありませんでしたので、問い合わせ窓口から問い合わせを行いました。
しかし残念、回答は得られませんでした。
ぴえん(´;ω;`)

沿革・歴史

商標としての「トンボレスキュー®」と「トンボレックス®」はどちらが先だったのでしょうか。
特許庁のJ-PlatPatにて調べてみましょう。

まず「トンボレスキュー®」については、出願日が1995年2月28日であることが分かります。(登録番号:3326876)
対して「トンボレックス®」は、出願日が2012年1月24日です。(登録番号:5499681等)

となると、ユアサグローブの方が先だったのでしょうか。
いや、これだけでは分かりません。
社名はどうでしょうか。

株式会社トンボという社名は、登記情報から、1996年に変更されたということです。
うーん、やっぱりトンボブランドとしてはユアサグローブが先発だったんですかねぇ。

ユアサグローブの方は、商標としてはさらに遡って1993年6月16日出願の「トンボワーカーズ」というブランドがありました。(登録番号:3157967)
はてさて、ややこしいですね…。(2回目)

みんな大好き赤トンボ

まぁなんだかんだ、トンボは良いですよね。
トンボマークなんか、デフォルメされたものが多くてカワ(・∀・)イイ!!
赤トンボマークの手袋を持っていますが、これもかわいいです。

そういえば、これはどこのメーカーだったかな…。
ユアサグローブのトレードマークは赤トンボでしたね。

特許庁データベース「J-PlatPat」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)より

うん、そのまんまやな。

特許庁データベース「J-PlatPat」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)より

この商標もユアサグローブの登録。
三角▽なんかも一致している…これはユアサグローブの手袋でしたかね。

(゚Д゚)(゚Д゚)(゚Д゚)(゚Д゚)(゚Д゚)(゚Д゚)(゚Д゚)
もうこれわっかんねぇなぁ…。

ハッ、失礼、この手袋は株式会社トンボ製でした。
ごめんなさいorz
(OL-E120BK-A)

しかし正直わけが分からないです(^q^)商標やろうにええんかこれ、委託品なんか?

結局手袋自体はどうなのか

実際問題、手袋としての品質はどちらも信頼できます。
どちらのメーカーも併せて数十双(3桁いくか?)使ってきましたが、問題を感じたものはありません。
はっきり言って、普通に手袋を使う分にはどちらのメーカーを選んでも差し支えないと思います。

例として、トンボレスキュー®の”C931W”とトンボレックス®の”CS-303W”を比べましょう。
まず、価格設定については、いずれも税込み3190円(2024年2月26日現在)と同様です。
また、サイズ展開についても、各々同様にSSから3Lまで同様に設定しています。
しかし、カタログ上はユアサの方が同サイズで1センチメートル大きめの設定です。
(実物同サイズを比べた感じでは1cmの違いは分かりませんが)

材質はいずれも撥水加工された牛革製。
牛革のみの単一材使用のため、当然いずれも消防救助技術大会に着用することができます。
ただ、厚みが少々異なり、前者では0.5-0.7mm、後者では0.7-0.8mmになっています。

それに伴い、重さが多少違ってきます。
(カタログスペックでは重さが書かれていない!)
3Lサイズ1双あたり”C931W”では約96グラム、”CS-303W”では約85グラムと、およそ11グラムの差異があります。
カタログ上では薄い方が、重量では重くなるんですねェこれが。

あと、色も結構違いますね。
基本的にユアサグローブの方は蛍光白色で、トンボの方は生成白色という感じです。
シルバーグレー系かアイボリー系かという具合でしょうか。

あとは、細かいですが、人差し指のアテ補強が若干ユアサの方が長いです。
この若干の差が実用に影響することは、あまりないと思いますが。

また、内部の縫製については、一部異なります。
ユアサでは革の端部にバイアステープが使われていますが、トンボではそのままです。(トンボも他の製品ではバイアステープを使っているものがありました)
また、平ゴムの幅と長さが異なり、ユアサでは巾約14mm×長さ約62mm、トンボでは巾約16mm×長さ約58mmでした。
また、サイズタグの方向や材質も違いますが…これはどうでもいいですかね(笑)
生産国タグは、ユアサは付けていますが、トンボは付けていません。

その他、カタログスペックの相違としては、水洗の可否がありますが、そこまでの大差はないと思います。
私の使い古した水洗OKは、このようにバリッバリになっています(゚∀゚)HAHAHA
水洗OKでも、水濡れはともかく洗浄はほどほどに…。

最後に大きな違いとして、買える場所があります。
いずれも官公庁相手の商売がメインで、販路が限られています。
インターネットを介せば両者買えますが、送料無料ラインが高いので、個人が1双2双だけとなると高くつきます。(Amazonでも定価より高く売られていますね)
そこで、ユアサであればワークマンが取引先としてありますから、実店舗で買うことができます。
(取り寄せも1双から無料)

結び

結論、各手袋はややこしいですが異なる存在です。
とは言っても、どちらも製品としてはしっかりしています。

私はネットショップの応対で(どちらとは明記しませんが)違和感があったので、基本ワークマンで買おうかなと考えているところです。
正直ネットショップというか、会社の情報管理に酷く疑義があるんですよねぇ…。
(問い合わせたアドレスに、別人別件の見積書が届くって、一体どんな体制なんだろうか)

いうてストックがそれなりにあるので1年はイランから買わんのですが(;´ω`)

参考文献・資料等

(※1)ユアサグローブ(株) 2023 「商標出所混合防止関連案内」【https://glove.co.jp/aboutlogo/】(2024/02/26閲覧)
(※2)トンボ鉛筆 2006 「『トンボ鉛筆』社名の由来」【https://www.tombow.com/blog/archives/2006/03/post-17.html】(2024/02/26閲覧)
(※3)ニチアス株式会社 2023 「トンボブランド100周年」【https://www.nichias.co.jp/column/detail/23】(2024/02/26閲覧)
(※4)倉野憲司・武田祐吉 1958 「日本古典文学大系 第1」岩波書店
(※5)坂本太郎 1967 「日本古典文学大系 第67」岩波書店
(※6)鹿持雅澄 1891 「万葉集 (鹿持雅澄訓訂)」
(※7)沼田頼輔 1926 「日本紋章学」明治書院
(※8)ユアサグローブ 2023 「ブランド紹介」【https://about.glove.co.jp/brand/】(2024/02/26閲覧)
(※9)たつの市 2015 「童謡の里たつの」【https://www.city.tatsuno.lg.jp/kurashi/bunka/jigyou/douyou.html】(2024/02/26閲覧)

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